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糖尿病 循環器科 運動器リハビリテーション

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動脈硬化疾患 arteriosclerosis

動脈硬化疾患

はじめに

生活習慣病が知れ渡るようになってから、動脈硬化という用語も一般的に用いられるようになってきました。
一般的には動脈硬化は全身の血管で一様に進行しますが、特に動脈硬化が高度になりやすい動脈として大腿動脈(太もも), 冠動脈(心臓), 頸動脈(首)が有名です。特に冠動脈は心臓を栄養しており、命にも関わるような心筋梗塞に進展します(虚血性心疾患)。日本人の死因は大きく分けて‘癌’と‘心臓死’であり、癌は徐々に体を蝕むのに対し、心臓死は突然訪れることも珍しくありません。著名人の突然の訃報の大半は心臓死ではないかと推測します。

動脈硬化は足し算ではなく掛け算

赤ちゃんのしなやかで弾力のある綺麗な血管から、年月とともに硬くなり血管内外にはゴミカスや石が付いていきます。
動脈硬化は大きく分けて①血圧、②コレステロール、③糖尿病、④タバコ、⑤年齢/体質(家族歴)の5つのリスクによって構成されます。
一つくらいは大丈夫だろうという考えは誤っており、一つでもあると5つを掛け算すると最終的には大きなリスク値になります。
該当項目が2個、3個と増えればとてつもなく大きなリスクになるため包括的な管理が必要です。

 

① 高血圧

血圧が高いと、当然血管にかかるストレスは上がり血管の内皮は傷つきやすくなります。
弁や心臓も血管の延長上(一部)であるため、高血圧を放置してしまうとこれらもカチカチになってしまい弁膜症や拡張障害の心不全をもたらします。
以前は理想の家庭血圧は収縮期血圧140以下でしたが、現在はより低い値が望ましいとガイドラインでは提唱されています。一般の方でも135以下、基礎疾患を有している方や高齢の方は130以下が目標となります。
食事に関しては‘塩は毒’という言葉につきます。味噌汁であればお出汁中心にし、味噌や醤油は減塩のもので少量、お漬物なども毎食ではなく頻度を減らすなどの工夫が必要になってきます。
1日の塩分摂取量は意識をしないと平気で10gを軽く超えてしまいます。

 

② 高コレステロール血症(高脂血症)

コレステロールは血圧や糖尿病に比べると患者さんの中では意識が低い印象を受けます。コレステロールの中でも特に重要なのが悪玉と称されるLDLコレステロールです。
LDLコレステロールが高いと急激に動脈硬化は進み、心筋梗塞や脳梗塞などの血管病にかかる確率が格段に高まります。心臓血管集中治療室には連日心筋梗塞の患者さんが搬送されてきますが大半の方がLDLコレステロールは高値です。血管イベントが起きてから下げるのではなく、事前に低下させることで血管イベントとは無縁な人生を送ることが望ましいと考えます。
LDLコレステロールの目標値は140mg/dL以下, 厳しく言えば120mg/dL以下です。血圧は下がりすぎると立ち眩みなどの低血圧症状で悩まされますが、LDLは低ければ低いほどいいという報告があります。心筋梗塞を起こした患者さんの目標値は70mg/dL以下である点もこれらの結果を反映しております。
「どうすれば下げられるのか?」とよく患者さんに聞かれますが、1番効果があるのは薬です。現在はスタチン系とよばれるLDLを抑える薬が世界的に普及しております。もちろん副作用が0ではないため適切に循環器専門医にかかり処方を受けることが重要になってきます。
紹介する順番は前後しますが、薬を内服する前に取り組むべきなのは食事制限や運動です。食事は乳製品(チーズや卵)や動物性の肉の過度な摂取は控え、魚にシフトすることが効果的です。運動も有酸素運動であるウォーキングや自転車などを1, 2時間、定期的に行うことが有効であるといえます。
⑤の体質ともリンクしますが、コレステロールは体質が大いに影響します。家族性高コレステロール血症という病名もある通り、どんなに食事や運動習慣を改善しても下がらない方は下がりません。特に中高年の女性に多い印象があります。
そのためLDLコレステロール高値が指摘されて、半年から1年生活習慣を改善しても基準値を下回らない場合はやせ我慢はせずにコレステロールを下げる薬でのコントロールを行うべきです。
コレステロールの中にはその他に善玉であるHDLコレステロールと中性脂肪もありますが、これらはLDLと比べると医学的に重要性は低いです。

 

③ 糖尿病

糖尿病は代表的な動脈硬化をもたらす疾患として幅広く知られています。
糖尿病は全身の血管と臓器を蝕み、いろいろな疾患をもたらします。心臓や血管はもちろんのこと、神経や腎臓、眼などが有名です。

正常右冠動脈 / 左冠動脈
正常冠動脈:右冠動脈 / 左冠動脈

 

糖尿病冠動脈
糖尿病患者の冠動脈

 

下段に示しているのは実際の糖尿病患者の冠動脈(心臓を栄養する血管)の画像ですが、血管内腔は非常に細く全体的に‘ごつごつ’していて、血管内腔が狭いのがわかると思います。
ここまで進行するとカテーテルを用いた治療は難しく(治療成績も比較的低く)、外科的にバイパス手術を行うしか選択肢がなくなる場合も少なくありません。
また糖尿病を持っている患者さんは狭心症状が乏しく、全く胸部症状がない方もいます。

糖質制限や有酸素運動の定期的な取り組みを行い、それでも不十分な場合は医療機関に受診して適切な薬物治療を受ける必要があります。インスリン抵抗性やインスリン関連の自己抗体の有無、自己分泌のインスリン量などを検査した上で飲み薬やインスリンなどの注射製剤を用います。
糖尿病の治療は低血糖という弊害とも隣り合わせであり、これらの治療は専門とする糖尿病内科や循環器内科で受けることが望ましいです。

 

④ 喫煙

タバコは百害あって一利なし’という言葉は健康面にはそのまま当てはまります。
肺癌や食道癌などの悪性腫瘍のリスクが上がることは有名ですが、全身の血管がボロボロに侵されます。2大死亡原因の‘癌’と‘心臓疾患’両者ともにリスクが上がってしまうのです。禁煙は自身の力では難しいケースがありますので、禁煙外来を行っている医療機関に相談することも検討してください。

 

⑤ 年齢・家族歴(体質)

年齢や体質もすごく重要なリスクファクターです。 心臓血管集中治療室には連日多くの心筋梗塞の患者さんが救急搬送されてきます。中には血圧・コレステロール・糖尿は正常範囲であり、タバコも吸っていない方も経験します。
その場合は大抵70歳以上で、血縁者(親や兄弟)に血管疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)の既往を有しています。これらを医療用語で‘家族歴’といい、問診で最初に確認する重要な事項の一つに含まれます。

さいごに

動脈硬化リスクである主要な5つを述べてきましたが、最後の⑤年齢/体質は努力しても変えることはできません。しかしながら①~④に関しては今からでも把握・管理は可能なものです。まずは市販のリーズナブルな家庭血圧計を購入し、近くの医療機関を受診して必要に応じて血液検査などを受け、現在の自分の動脈硬化リスクの状態を把握しましょう。

外来や病棟業務をしていると現在は本当に元気なご高齢の方が多いです。
しかしながらそのような方でも決して心血管疾患は無縁ではなく、これらのイベントは突然訪れます。そのイベントを境に元気だった方も寝たきりに近い状態になり、自宅には帰れず施設に退院となってしまう方をよく経験します。
健康寿命を延ばすためにも早めに意識して備えておくことが重要です。


文責:茂澤メディカルクリニック 循環器内科 茂澤 幸右

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